平成28年度の地籍調査において、不動産登記簿上で所有者の所在が確認できない土地の割合は、約2割に上ることが明らかとなった。また、一般財団法人国土計画協会が設置した所有者不明土地問題研究会の試算によると、このまま推移すれば2040年には所有者不明土地の面積が約720万ヘクタールに達するとされている。
このような現状において、現行制度における所有者不明土地の利用への対応策としては、土地収用法における不明裁決制度または民法における不在者財産管理制度および相続財産管理制度が挙げられる。
不明裁決制度については、地方公共団体等が所有者の氏名または住所を過失なくして知ることができない場合、調査内容について記載した書類を添付することにより、収用裁決の申請が可能であるが、所有者探索をはじめとした手続に多くの時間・労力・費用を要する場合がある。
また、不在者財産管理制度および相続財産管理制度については、利害関係者または検察官の申立てに基づき、家庭裁判所が選任した財産管理人が所有者不明土地等の財産の管理等を行うが、地方公共団体がどのような場合に申し立てられるかが不明確な上、不在者等1人につき管理人1人を選任するため、不在者等が多数の場合には手続に多大な時間・労力・費用を要する。
このように、所有者不明土地の利用については、明確に反対する者がいないにもかかわらず、多大な時間とコストを要することもあり、公共事業等を進める上で大きな支障となっている。
よって、国会および政府におかれては、所有者不明土地の所有者の探索の円滑化とその利用促進を図るため、下記の事項について適切な措置を講ずるよう強く求める。
記
1 所有者不明土地の発生の抑制およびその解消に資する制度を整備すること。
2 土地所有権の放棄の可否および土地の管理責任など、土地所有のあり方の見直しを行うこと。
3 所有者の探索を合理的な探索範囲に限定することおよび有益な所有者情報へアクセスする仕組みの構築などにより、所有者の探索の簡素化を図ること。
4 所有者不明土地の収用手続の合理化および円滑化を図るとともに、収用制度の対象とならない公共的事業についても、所有者不明土地の利用が促進される制度を整備すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成30年3月22日
滋賀県議会議長 奥 村 芳 正
(宛先)衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣、農林水産大臣、国土交通大臣