戸籍は、人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので、日本国民について編製され、日本国籍をも公証する唯一の制度である。
子の出生の届出をしなければならない者が、何らかの事情で出生届を出さないために、戸籍がないまま暮らさざるを得ない子供や成人がおり、こうした無戸籍者は、自らに何らの落ち度がないにもかかわらず、特例措置などで救済されるケースを除き、住民登録や選挙権の行使、運転免許やパスポートの取得、銀行口座の開設等ができないなど著しい制約を受けている。
このように、社会生活上の不利益を受けていることは、基本的人権にも関わる深刻な問題である。
また、無戸籍状態にあったとしても、関係省庁によるこれまでの通知等により、一定の要件のもと行政サービス等を受けることができるとされているところであるが、そのことが自治体職員まで徹底されておらず、誤った案内がなされている事例が見受けられる。
無戸籍者は、我が国の国民であるにもかかわらず、種々の生活上の不利益を被るだけでなく、自らが無戸籍であること自体で心の平穏を害されており、一刻も早い救済が必要である。
よって、国会および政府におかれては、無戸籍者問題を解消するため、下記の事項について総合的な対策を講じられるよう強く求める。
記
1 強制認知調停の申立てに対する家庭裁判所窓口での不適切指導を是正するとともに、法務省や裁判所のホームページの記載を改め、申立書の書式の改定等についても検討すること。
2 関係機関に対し無戸籍者問題の理解を促し、窓口担当者を含め、適切な対応を周知徹底すること。
3 嫡出否認の手続に関する提訴権者の拡大や出訴期間の延長、民法第772条第1項の嫡出推定の例外規定を設けるなど、新たな無戸籍者を生み出さないための民法改正を検討すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成30年12月21日
滋賀県議会議長 川 島 隆 二
(宛先)衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務大臣