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知事提案説明(平成18年 1月臨時会)

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平成18年1月県議会臨時会 知事提案説明

平成18年1月県議会臨時会 知事提案説明

 本日ここに滋賀県議会臨時会を招集し、議員各位のご参集を願ったところでございますが、提出いたしました案件につきまして、その概要と所信について申し述べたいと存じます。

 まず、議第1号は、去る1月13日、「びわこ栗東駅(仮称)」建設の是非を問う住民投票条例の制定について、地方自治法第74条第1項の規定に基づく請求がありましたので、この条例案について、同法第74条第3項の規定に基づき、私の意見を付して提出をさせていただいたものであります。

 直接請求の趣旨は、要約いたしますと、県民の中に新幹線新駅を設置することに心配と不安があり、「本当に必要なのか」との根本的な疑問が存在することから、住民投票という手法で県民にその建設の是非を問う、というものであると認識いたしております。

 東海道新幹線新駅の設置につきましては、県といたしまして長期構想等に立脚し、関係自治体等と連携、協力し、また、県議会議員各位のご理解とご支援を賜りながら、長年にわたり新駅実現に向けた取り組みを進めてきたところであります。

 もとより、東海道新幹線は文字通り日本の大動脈であり、これまで日本経済を力強く牽引し、我が国の発展に大きな役割を果たしてまいりました。その社会的・経済的効果が極めて大きいことは論を待たないところであります。

 一方、新駅を設置しようとする県南部地域は、豊かな自然や歴史、文化を育むとともに、人口や産業あるいは大学等の教育研究機関が集積する県内でも最もポテンシャルの高い地域であり、また、東西南北に道路が通り、鉄道も集まるなど、県内にあって、また全国的にも「交通の要衝」であります。このような地域に東海道新幹線の新駅を設置いたしますからこそ、人や情報の新たな往来が生み出され、企業の立地とともに観光などの第三次産業が興り、さらには大学や研究機関が一層集積するなど、滋賀の新たな時代が創られるものと考えるものであります。

 こうした新たな環境が生み出されることで、企業にとってはビジネスチャンスが、人々には新たな出会いが生み出され、それぞれの地域で地域資源を掘り起こし、知恵を結集してまちづくりを実行することによりまして、さらに人々が集い、相乗的に地域の活性化が促されるところであります。そして、その便益や効果は県下全域に及び、本県の持続的な発展につながるものであり、本県が地域間競争に打ち勝っていくための切り札にもなると確信するものであります。

 今日の滋賀の礎となっている優れた交通基盤は、先人達の努力によるものでありますが、平成の時代に生きる我々は、単に、先人たちの残してくれたこうした遺産に安住することなく、今、何をしなければいけないのか、また次の世代に何を残すべきかをしっかり考え、行動しなければなりません。

 このような考え方のもとで、長年にわたり新駅実現に向けた取り組みを進めてきたものでありますが、ようやく平成14年4月に、長年の関係者の努力が実り、JR東海との基本協定を締結いたしまして、新駅の設置が正式に決定いたしました。

 その後、JR東海による新駅の着手ならびに開業に向けまして、地元自治体が行うこととされていた取り組みを鋭意進めてきたところでありまして、県議会におきましても、新駅設置に関しまして、様々な角度から終始熱心なご議論を幾重にも積み重ねていただいてまいりました。

 一昨年8月には、新駅の設置促進協議会が行いました「新幹線新駅の波及効果と地域整備戦略の深度化調査」の結果を公表し、これを踏まえて、新駅の利用見込みやその効果について、あわせて地元が負担すべき費用について、県議会にご説明し、ご議論を賜ってまいりました。

 そこでは、新駅から様々な効果を県下全域に幅広く、また着実に、かつ永続的に受け続けることができるといったことや、そのような効果により県税等の税収入の増加が見込めるものであり、県が新駅に投資した額は、開業後の10年を待たずして回収できるとの試算結果もご紹介をしてまいりました。そして、新駅を設置した後は、その運営や管理はJR東海が行うこととなり、地元はランニングコストなどの県費は一切負担することなく、新駅からの様々な効果を永続的に受け続けるのみとなるものであります。したがいまして、厳しい財政状況であるからこそ極めて有効なプロジェクトとして新駅の設置が必要であり、是非とも新駅の実現を図ってまいりたいとご説明申し上げてまいりました。

 同時に、その設置費につきましては、新駅の設置位置の選定の経緯とともに、新駅が他の請願駅よりも高くなる理由などにつきましてもご説明をしてまいりました。あわせまして、私自身がJR東海の会長や社長とも出会い、コスト縮減を直接要請し、JRから「工事の施行にあたっては、コスト縮減に最大限努力する」という約束をいただいたこともご説明申し上げてきたところであります。

 また、地元が負担すべき費用に関しましては、2分の1を県が負担する必要性や関係各自治体の費用負担についてご説明し、ご議論を賜ってまいりました。あるいは県民の皆さんへの説明責任について、さらには新駅を活かした本県の将来像等につきましても、ご議論を賜ってまいりました。これらの議論は、厳しい県財政の状況を踏まえた上で、地域の振興と本県の将来を見据えた多様な角度からのご議論でありました。

 特に昨年7月には、新幹線新駅の設置に係る県の費用負担について集中的にご審議をいただくため、県議会臨時会を開催し、年内にJR東海との工事協定を締結するということを前提としつつ、新駅設置の効果を早期に引き出すべく、それまでの長きにわたります議論を踏まえまして、慎重な審議の上で関係の補正予算案を可決をいただきました。

 また、一方で関係各自治体におかれましても、同様に関係市議会の議決を得て新駅の負担に係るそれぞれの所要の予算が措置され、ほぼ整ったことを踏まえまして、去る12月25日にJR東海との工事協定を締結し、新駅の開業に向けての新たな一歩を踏み出すことができたところであります。

 このように、県議会におきましては、長きにわたる総合的かつ多様な角度からの熱心なご議論をもとに、慎重な審議の上で新駅設置を実現するための具体措置である関係の予算について可決をいただいたところであり、この議決によりまして県民の代表である県議会の意思が最終的に明確になったところであります。

 もとより、私自身は、本県の現在と将来に責任をもつ知事として、新駅の設置に関しまして、平成15年に策定いたしました「滋賀県中期計画」におきまして、本県におけるその位置付けを確固たるものとし、これも踏まえつつ、厳しい県財政の中で、どのように取り組んでいくのかを判断し、取り組みを進めてまいりました。

 私は、知事と県議会に課せられた責務は、ともに県行政を預かる者として、これからの滋賀県がどうあるべきかを真摯に考え、相互に議論しながら、当面する課題を適切に処理するため、総合性、一貫性、展望性をもって施策を展開し、県民の皆さんの負託に応える県政を実現していくことであると考えております。

 申し上げるまでもなく、議会制民主主義を基本とした我が国の地方自治は、県民が選挙で選んだ知事や県議会議員に、様々な課題への対処や将来を見通した施策などの行政の推進を付託し、また選ばれた知事や県議会議員は、その県民の負託に応えてあらん限りの力を尽くすことで成り立っていると考えておりますが、私は、この仕組みを最大限尊重していかなければならないと思うものであります。

 しかし一方で、住民投票については、議会制民主主義を補完する大事なものと考えます。しかしこれをどのようなテーマについて、またどのようなタイミングで実施するのが適切であるかということについては、地方自治行政の基本たる議会制民主主義とのかかわりの中で、十分慎重に考える必要があると考えます。

 このような観点から、新幹線新駅の設置というテーマについては、現在の行政需要に応えつつ将来のあるべき滋賀の姿を実現していくための施策として、全般を踏まえた議論としてなされるべきものであり、常に専門的に県政全般を見渡し、また将来を見据えて長期的見地から各種の事項を審議していただいている県議会での審議経過を尊重すべきものと考えます。

 これまでの長きにわたり、そのような前提のもとで県民の皆さんの代表たる県議会議員として県議会におきまして、新幹線新駅の設置について活発な議論を賜ってきたものと認識しております。まさに、条例制定請求の趣旨にありますような論点につきましては、本会議はもとより生活文化・土木交通常任委員会や経済振興対策特別委員会において活発に議論が交わされてまいりました。

 そして、新幹線新駅の設置に対しましては、県民の皆さんの中に様々なご意見があります中で、先程申し上げましたように、昨年7月の臨時議会におきまして、徹底した議論を経て、新駅設置の負担額に係る補正予算案を可決いただいたところであります。このことは即ち、これまで長い歳月をかけて議論してまいりましたこのプロジェクトに対しましては、新駅を設置すべしとの県議会の最終的な意思を示していただいたということであります。

 したがいまして、タイミングの点からも、県議会の意思が最終的に示された今、改めて、新幹線新駅の設置について住民投票に委ねるということは、議会の役割や権限、さらには議会制民主主義そのものの否定にもつながりかねず、なじまないものと私は考えます。さらに、このことは県議会だけにとどまらず、ともに新駅の設置費用を負担することを審議し、議決された関係各自治体の議会の役割や権限にもかかわる問題であると考えます。

 今回の請求にあたって7万人余りの有権者の署名が集められたということはその重みを真摯に受け止めるものでありますが、以上のことから、「びわこ栗東駅(仮称)」建設の是非を問う住民投票条例は、これを制定する必要がないものと考えるものであります。

 ただ、新駅の設置につきましては、経済界の方々等を中心に「滋賀の元気なまちづくり県民会議」が設立され、新駅設置の募金活動や啓発活動に取り組まれることとなっていることなど、その設置を期待し、待ち望む声が多くある一方で、必ずしも十分にご理解いただいていない面があるということも真摯に受け止める必要があると考えております。

 なお、重ねて申し上げれば、新幹線新駅は全体として240億円という初期投資を必要といたしますが、その後の維持管理経費や経営上のリスクはすべてJR東海が負うということになり、関係自治体は新駅設置後は税収をはじめ新駅の及ぼす様々なプラスの効果を受けるのみであるという点で、極めて有利な社会基盤の整備となるものであります。もとより、その投資の回収速度を少しでも速めるという観点からも、あるいはせっかくの社会基盤を県土の発展に活かすという観点からも、新駅によるプラスの効果を、いかに地域づくり、まちづくりにつなげていくかという具体策を一刻も早く作り上げる必要ございます。

 新駅の開業時期が明確となり、いよいよ今後、工事が進められる中では、県民の皆さんに新駅の開業をより実感していただけるものと考えられますことから、引き続き、県はもとより新駅の設置促進協議会や関係自治体さらには「滋賀の元気なまちづくり県民会議」などとも連携、協力し、様々な媒体を活用して広報に努めることによりまして、新幹線新駅設置に対するより深い理解が得られますよう取り組んでまいる所存であります。

 次に、併せて提出しております案件でありますが、議第2号および3号は、契約の締結について議決を求めようとするものでありまして、いずれも琵琶湖流域下水道に係る管渠工事について着工することとし、円滑な執行を図ろうとするものであります。

 以上、何とぞよろしくご審議を賜りますよう、お願い申し上げます。
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