えん罪は、有罪とされた者やその家族の人生を狂わせ、時にはその生命をも奪いかねない最大の人権侵害である。我が国では、憲法に多数の刑事手続関連条項を設け、刑事訴訟法等の法律を充実させることにより、えん罪の発生を防止しようとしてきた。しかし様々な原因により、えん罪が発生するおそれは払拭できない。えん罪の発生を防ぐことはもちろん、えん罪が発生した場合に、速やかに救済することは、国の基本的な責務である。
三審制の下で確定した有罪判決について、重大な瑕疵があった場合にはこれを是正し、有罪判決を受けた者を救済する非常救済手続である再審制度については、刑事訴訟法第4編「再審」に定められている。しかし、再審請求手続に関する詳細な規定がないことから、再審請求審において裁判所がどのような権限を行使できるか明らかではなく、過去のえん罪被害者の救済には多くの困難と長い年月を経ることとなっている。
特に、再審請求審における証拠の開示については、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)附則第9条第3項において、同法の公布後、必要に応じて速やかに検討を行うものとされているにもかかわらず、今なお制度化は実現していない。
また、ひとたび再審開始決定がなされても、検察官がその決定に対する不服申立てをすることにより、速やかに再審公判手続に移行できず、再審手続が長期化している実情がある。
えん罪が発生するおそれを払拭できない以上、再審は、最後の救済手段としての重要な役割を果たすことから、確固たる手続が整備されていなければならない。
よって、国会および政府におかれては、えん罪被害者を迅速に救済するため、刑事訴訟法の再審規定の改正に向けた議論を慎重かつ速やかに行うよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年7月12日
滋賀県議会議長 有 村 國 俊
(宛先)衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務大臣