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知事提案説明(平成17年 7月臨時会)

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平成17年7月県議会臨時会 知事提案説明

平成17年7月県議会臨時会 知事提案説明

 本日ここに東海道新幹線新駅の設置についてご審議を願うため、滋賀県議会臨時会を招集し、議員各位のご参集を願ったところでございますが、提出いたしました案件につきまして、その概要と所信について申し述べたいと存じます。

 我が国の鉄道は、明治5年10月に新橋と横浜間の29キロメートルで開通したことを始まりとしまして、全国に鉄道網が張り巡らされ、我が国の近代化と発展を牽引する大きな役割を果たしてまいりました。統計によりますと平成15年時点では、鉄道の営業キロは2万7千5百キロを超え、輸送人員では年間217億5千7百万人に至っております。

 このような中で、新幹線につきましては、我が国経済が高度成長の道を歩む中で、鉄道輸送のスピードアップを図るために、世界でも最も速い鉄道として、昭和39年10月に、東京オリンピックの開催にあわせて産声を上げました。それが現実のものとなる以前は、新幹線を「夢の弾丸鉄道」と期待を込めて呼ぶ一方で、逆に「無用の長物」として批判する向きもあるなど、評価は当時様々でありましたが、東海道新幹線の開通によりまして国民の多くはその社会的・経済的な効果が極めて大きいということを目の当たりにすることとなりました。

 以来、新幹線は我が国の繁栄はもとより沿線地域の発展にも欠かせないものとして認識されるようになり、その後昭和44年に発表されました「新全国総合開発計画」におきましては、総延長7千2百キロに及ぶ「新幹線鉄道網案」が発表されております。

 翌昭和45年には「全国新幹線鉄道整備法」が成立、施行され、その後は全国各地で新幹線の建設要求が沸き起こったことはご承知のとおりであります。

 現在におきましても、全国各地に数多くの新幹線待望の声がありますし、そうした期待を担い、これまでに幾つもの新幹線網が整備され、また、計画が進められております。このような中にありまして、先陣を切りました東海道新幹線は、今日では毎日35万人もの人々を運ぶ、文字通り日本の大動脈となり、この間、日本経済を大きく牽引し、我が国の発展に大きな役割を果たしてきたことは論を待たないところであります。

 一方、このような東海道新幹線が走る滋賀県は、歴史が物語りますように、いにしえより「交通の要衝」として栄えてまいりました。古くは大津や今津に名が残りますように湖上交通が栄え、また「道の国」とも呼ばれましたように東海道や中山道、北国街道など我が国の主要な街道が走り、そのことで、全国津々浦々から人や物とともに情報や文化が行き交い、日本の歴史の中で常に重要な舞台となってきたところであります。その中で近江商人が生まれ、商品をあきなう産業が興り、発展してきたとも言えます。

 近代に入りましては、明治の時代におきまして、鉄道の時代の幕開けとともに、いち早く大津、長浜で鉄道建設が着工され、かつて街道と呼ばれた道は徐々に国道と名前を変え、幹線道路網を形成してまいりました。昭和の時代に入りまして、特に戦後モータリゼーションの時代を見据えて、我が国初めてのハイウェイが、昭和38年に栗東と尼崎間に名神高速道路として開通をいたしました。この翌年、本県内を新幹線が開通を見るなど、本県には常に、その時代、時代に先駆けた交通基盤が整備されてきたところであります。

 こうした近代以降の交通基盤整備は、単に本県の恵まれた立地条件だけで整備されたというものではなく、常に先人達の血のにじむような努力があってこそもたらされたものであります。そして、本県がこうした交通ネットワークの充実に、全国に先駆けて取り組んでまいりましたことが、国土交通軸の中で滋賀の優位性を築き、本県の産業や文化の発展に大きく貢献してきたものと考えるものであります。

 しかし、今日全国各地で高速道路や新幹線の重要性が認識される中で、それぞれの地域で整備や計画が着実に進んでおりますだけに、もはや本県の相対的優位性は、残念ながら低下してきているというのが現実であり、強い危機感を禁じ得ません。優れた交通基盤を残していただいた先人達の努力に思いをはせるとき、平成の時代に生きる我々は、単に、先人の遺産に安住することなく、今、何をし、次の世代に何を残すべきかをしっかり考え、行動しなければならないと思うものであります。

 新幹線は、多くの人と情報を運び、そしてビジネスをはじめとする様々な出会いのチャンスをもたらす手段でありますが、特に東海道新幹線は文字通り日本の大動脈として、在来線はもとより新幹線の中でも社会的・経済的に計り知れない大きな影響力を持つものであります。その新幹線の停車駅が、既に県北部に米原駅として存在いたしますが、本県が人口が増加し続ける唯一の県であることや、製造業が多く集まり、また観光資源に恵まれていること、加えて近年大学が集積していることなどから考えますと、県内に複数あってこそはじめて、その便益を十二分に享受し、滋賀の地域特性を存分に発揮することが出来るものと考えるものであります。

 このような考え方に立脚し、既に昭和62年の「湖国21世紀ビジョン」の中では、「県内で最も人口が多く、都市活動も活発な県南部に駅がないため、利便性の恩恵を十分受けているとは言い難い状況にある」と指摘されております。その後、平成9年の県の長期構想「新・湖国ストーリー2010」の中で、新幹線新駅設置の姿勢を明確にし、その実現に向けてみんなで取り組んでまいりました。そして、これを推進していくために、地元栗東市をはじめとする関係自治体と連携しつつ、県議会議員各位のご理解を賜りながら、取り組みを進めてきたものであります。長く、そして地道な取り組みの末、ようやく平成14年4月にJR東海との基本協定を締結し、新駅設置が正式に決定いたしました。これは、まさに長年にわたる関係者の汗と努力が見事に結実した瞬間であったと私は考えております。

 そして、昨年8月には、新駅の設置促進協議会が行いました「新幹線新駅の波及効果と地域整備戦略の深度化調査」の結果を公表し、これを踏まえまして、新駅の利用見込み数やその効果、あるいは240億円という設置費につきまして、県議会にご説明し、ご議論を賜ってきたところであります。

 また、地元が負担すべき費用につきましては、2分の1を県が負担する必要性や関係各自治体の費用負担について、あるいは県民の皆さんへの説明責任等についても、ご議論を賜ってきたところであります。

 そして、こうした今日までの議論や準備の積み重ねの上に立ちまして、将来の湖国滋賀の更なる発展に思いを致しますとき、その実現に向けた関係自治体の思いが改めて一致いたしました今こそ、本県のもう一つの新たな玄関口の実現に向けて、次なる一歩を踏み出すときであると考えるものであります。

 特に、新駅の地元費用負担につきましては、先般、新駅の設置促進協議会の「調整会議」におきまして、新駅設置を請願いたしておりました地元自治体として、JR東海との約束を果たすべき時期を迎えているとの共通認識のもとに、一定の合意を見たところであります。なお、こうした中で、費用負担の一部未調整の部分につきましては、私が知事として、責任をもってJR東海との工事協定締結の時期までに解決に当たってまいりたいと存じます。

 もとより、新駅を設置しようとする県南部地域は、人口や産業あるいは大学等の教育研究機関が集積する県内でも最もポテンシャルの高い地域であり、また、東西南北に道路が通り、鉄道も集まるなど「交通の要衝」でもあります。このような地域に新幹線新駅を設置いたしますからこそ、かつて主要な街道が走り「道の国」として栄えた歴史から見ましても、人や情報が交流し、また物づくりとともに物流や観光などの三次産業が興り、さらに新しいものを研究開発する大学や研究機関が一層集まるなど、滋賀の新たな時代が創られるものと考えるものであります。

 そのような環境整備が本県の新たな「資本」となり、企業にとってのビジネスチャンスを生み出すものと考えますし、それぞれの地域で資源を掘り起こし、知恵を結集して、まちづくりをしていくことなどによりまして、更に人々が集い、相乗的に地域の活性化が促されるものと考えます。そして、その便益や効果は、県南部地域はもとより県下全域に及び、本県の持続的発展につながる極めて効率的な投資になるものと確信をするものであります。

 先の定例会の代表質問でも答弁いたしましたとおり、新幹線新駅は、滋賀の将来を託した極めて重要なプロジェクトであり、地域間競争を打ち勝つための切り札になるものであります。それだけに、新駅設置を仕上げることは、本県の現在と将来に責任を持つ滋賀県知事としての責務であり、まさに私が政治生命を懸けて実現しなければならない課題であります。

 滋賀の「地の利」を最大限に生かし、この千載一遇のチャンスを逃すことなく、ぜひ今、新駅設置を本県の活性化の起爆剤として、湖国しがの将来への展望を切り開いてまいりたいと考えます。

 本日提出いたしました議案は、そのための新駅設置に対する県の負担額であります116億9,700万円の債務負担行為を補正予算として追加しようとするものであります。県民の皆様の深いご理解と、議員各位の絶大なるご支援、ご協力をお願い申し上げ、提案とさせていただきます。何とぞよろしくご審議の程お願い申し上げます。
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