意見書第18号
医療費財源の確保を求める意見書
今や、世界に誇る日本の医療保険制度が崩壊の危機にある。財政至上主義による医療費抑制策が進められる中で、多くのゆがみや格差が見られるようになってきた。
患者の自己負担が引き上げられ、経済的に余裕のない低所得者や年金生活者は、病気になっても受診できなくなり、所得格差がそのまま医療格差につながりつつある。
産科や小児科の医師不足に端を発した医療崩壊も、今や、内科、外科の医師不足に広がり、各地で救急医療を初めとする急性期医療の存続も危ぶまれている。
また、国は全国の療養病床を38万床から15万床に削減する計画を掲げており、この計画が実行されれば高齢者が行き場を失うおそれがある。本来、医療が必要であるにもかかわらず退院を余儀なくされ、介護施設や在宅にも行き場のない医療難民、介護難民が生まれる懸念がある。
さらには、平成20年4月からの、75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度では、すべての高齢者に保険料を負担させる一方で、受診を1人の医師のみに制限し、高齢者から医療機関を選択する権利が奪われようとしている。
これらの医療費抑制策に起因する多くの弊害が噴出しているにもかかわらず、さらなる医療費の削減策が進められようとしている。日本は国内総生産に対する総医療費の割合が先進諸国の中で22位と低いにもかかわらず、世界一の健康寿命、健康達成度を実現している。これは、比較的安価な費用で、だれもが、いつでも、どこでも、公平かつ平等に安心して医療を受けることができる国民皆保険制度によるものである。しかし、現状のままでは、日本の医療は荒廃し、社会保障の柱である国民皆保険制度が崩壊する。
よって、政府ならびに国会におかれては、国民が安全で質の高い医療を公平に受けられ、格差に苦しむことのないよう、必要な医療費財源を確保し、安心して暮らせるよう、下記の事項について特段の配慮をされるよう強く要望する。
記
1.国民の生命と健康を守るため、必要な医療費財源を確保すること。
2.社会保障の理念に基づいた国民皆保険制度を堅持すること。
3.医師・看護師不足を解消し、安心できる地域医療体制を確保すること。
4.医療費の患者負担を軽減すること。
5.高齢者のための療養施設の十分な確保とフリーアクセスを堅持すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成19年12月21日
滋賀県議会議長 出原 逸三
(宛先) 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣