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意見書第7号 「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法の強行採決に抗議するとともにその見直しを求める意見書(案)

番号
意見書第7号
(平成29年)
議決年月日
平成29年7月12日
結果
否決

本文

 去る6月15日、参議院本会議において「テロ等準備罪」(以下「いわゆる「共謀罪」」という。)を新設する組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が、十分な審議を経ることなく、中間報告という異例の形で委員会の採決を省略し、本会議における強行採決によって可決され、成立した。
 政府は、世界で頻発するテロ事件を引き合いに出し、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けたテロ対策を進めるためと説明したが、今回成立した改正法では、審議の過程でテロ対策として真に実効性のあるものではないことが明らかとなった。併せて、政府は、国際組織犯罪防止条約の締結のための国内法の整備と説明したが、同条約がテロ対策のための条約でないことや加盟に国内法の整備が必要とされないことも明らかとなっている。
 そもそも今回の改正法は、国民からの強い反対を受け、過去三度にわたって廃案となった「共謀罪」法案と何ら変わるものではないことが、審議を通じて明らかとなっており、その説明も二転三転するなど、政府が言うところの適用対象や構成要件などが厳格になったとは言えない。
 歴史が証明するように、法律は解釈と運用次第で都合よく使われる危険性があり、安倍政権においては憲法の解釈を大きく変えてきた経緯もある。それゆえに、より慎重な審議が必要であり、国民の自由な発言が奪われ、人権が脅かされることで、民主主義が後退するのではないかという大きな不安や疑念が審議の過程で払拭されていかなければならないが、審議を経るにつれ改正法案に対する不安感や不信感は大きく膨らんだ。そのような中で、政府は委員会における審議を中断し、会期を延長することもなく、国民への説明責任を放棄して参議院本会議の採決を行ったことは、極めて異常な事態である。
 一方、国連人権理事会のプライバシーの権利に関する特別報告者からは、改正法案が成立した場合、プライバシーや表現の自由を制約する恐れがあるとの懸念が表明されるとともに、改正法案について説明を求められていたが、政府は特別報告者に抗議のみを行い、求められた説明を行わなかったことから、今後、国連人権理事会の場において、改正法に対する懸念が報告されることで、国際社会からの批判が高まることは明白である。
 また、犯罪集団を特定するために一般市民のあらゆるコミュニケーションを傍受する監視社会への懸念、犯罪を計画した者の逮捕が可能となることによる密告社会への懸念に加え、自白偏重、冤罪増加への懸念も指摘されてきたところである。さらに、全国の地方議会からも、改正法案に対し、慎重な審議や反対・撤回・廃案を求める意見書が、相次いで提出されていたにもかかわらず、採決を強行したことは、極めて遺憾である。
 よって、本県議会は、先の国会におけるいわゆる「共謀罪」を新設する改正法案を審議が不十分なままに採決したことに抗議するとともに、国会および政府におかれては、早期に国会を召集し、先の国会で成立した改正法の見直しを十分な議論のもとに行い、国民のためのテロ対策として、真に実効性のある法の成立を目指すよう強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

     平成29年7月12日

                         滋賀県議会議長  奥  村  芳  正 


(宛先)衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務大臣、外務大臣、国家公安委員会委員長

会議録

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