感染症対策の基本は適切な検査を正確に行うことであるが、PCR検査などでは感染者が自主的に検査を受けなければ陽性者を特定できず、各地域における傾向を正確につかむことは難しい。しかし、「下水サーベイランス」を活用すれば、その地域の感染の状況を可視化でき、医療機関の検査報告よりも早期に感染拡大の兆候を検知し、その後の流行の規模や感染者数の傾向も把握できる可能性がある。
内閣官房が令和4年度に実施した「下水サーベイランスの活用に関する実証事業」でも、その結果報告において「将来の感染状況の予測によって、市民への注意喚起や地方公共団体の体制整備に活用できる可能性がある」と明記されている。
新型コロナウイルス感染症の5類移行後、感染者数の把握が定点把握に変更され、感染状況を正確に捕捉することが困難になっている。今後起こりうる感染の傾向やピークを把握するため、また、新たな感染症に対応するため、「下水サーベイランス(下水疫学調査)」を全国の地方公共団体の下水処理場で実施すべきである。
よって、国会および政府におかれては、令和5年9月1日に発足した「内閣感染症危機管理統括庁」を司令塔とし、厚生労働省、国土交通省、各地方公共団体の連携により、下水サーベイランス事業を早急に全国展開されるよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和5年10月13日
滋賀県議会議長 奥 村 芳 正
(宛先)衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、感染症危機管理担当大臣